
旅の締めくくりにふさわしい舞台が待っていた。
私はJTBの「ガンダムパビリオン入場確定ツアー」に参加していた。あの気パビリオンに、すっと入れるというのだから、まるで宇宙港の搭乗ゲートを通過するような特権的な気分である。

これが、自分にとって三度目の万博、そして最後のパビリオン。そう思うと、心の奥が少しきゅっと締めつけられた。けれども扉が開いた瞬間、そんな感傷はすべて消え去った。そこはもう、地球ではなかった。




無数の光が漂い、“ボール”が宇宙の掃除屋としてデブリを片づけていた。音もなく働く姿に、不思議な安堵を覚える。モビルスーツたちは、もはや戦いの象徴ではない。展示は「実用」と「共生」の物語を紡いでいた。人の手が届く未来、その延長線上に、彼らは確かに存在している。


現れたのは宇宙エレベーター。天へと伸びるその塔を、ザクがサポートしていく。かつて敵だったはずの存在が、いまや案内人として私たちを導くのだ。未来とは、そういう不思議な融和の形をしている。



そして、私が最も愛する“ジム”が登場した。控えめで、真面目で、いつも誰かのために働くその姿が好きだ。巨大なスクリーンの中で、彼らは懸命に作業を続けている。


ところが突如、空気が一変した。闇の中から現れたのは、あのジオング。観客の息が止まり、映像の光が私の顔を照らす。


その瞬間、ガンダムが現れた。力強く、しかしどこか優しいまなざしで世界を照らす。戦いの終わりに訪れる静寂、そして平和の鼓動――。




パビリオンを出たあと、夢洲の空はうっすらと茜に染まっていた。
巨大なガンダムの足もとに近づくと、「CAUTION」と書かれた警告文の隅に、小さくミャクミャクがいた。あの奇妙で愛らしい存在が、ここでも息づいている。万博の記憶が、さまざまな形でこの地に散りばめられているのだと思う。

風が頬を撫で、心がすこしだけ軽くなった。
人はなぜ並び、なぜ心を動かされるのか――。
ガンダムの影の下で立ち止まりながら、私は静かに思った。
この夢のような万博の時間も、きっと心の奥で、いつまでも拍動し続けるのだ。