• 万博閉幕から

tokyo1970万博体験記 ㉔スロバキア

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クロアチア館と同じコモンズ-Cに心を奪われた者は、ふと足を止める。次なる旅路はスロバキアである。夢洲の片隅に、ひっそりとスロバキアの風が吹いていた。

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控えめな佇まいのスロバキアコーナー。その入口には、まるで眠れる森の予感を漂わせるように、美しい山岳の映像がディスプレイに揺れていた。雪に覆われたタトラの尾根、茜色の湖畔、街道に並ぶ古い家並み。そのすべてが、こちら側の現実を一枚膜のように隔て、観る者を知らぬ国の夢へと連れ去る。

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中に足を踏み入れると、壁一面に映し出される風景の数々が、無言の語り部として時の流れを紡ぐ。旅人の視界は、次第に異国の時間に染まっていく。手すりには木の意匠が施されており、その節々にスロバキアの民芸と精神が潜んでいるようだった。工業展示でも科学でもなく、ここでは静かに「土地の呼吸」が漂っている。

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小国と思っていたその地は、案外こちらの心の奥底に触れてくる。万博という名の大仰な催しの中で、ここだけがまるで古書店の奥にある秘密の書庫のようで、目立たぬままに何かを残していく。気づけば足が止まっている。そして次に進めない——それは、この国が持つ魔法のひとつに違いなかった。

投稿日:2025年7月23日

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