
コモンズC館の一角、無言の佇まいのなかに突如現れるのがクロアチア館である。巨大なパビリオン群の喧噪に囲まれながら、ここだけがどこか機械仕掛けの温室のようで、列の短さにもかかわらず、なにやら只ならぬ空気が漂っていた。


展示と呼べるものは少ない。壁にぼんやりと浮かぶサーモグラフィー画像が、かろうじてこの館の「意図」を語っていた。それによれば、この空間はクロアチア全土に点在する45の気象観測所からの最新データを集め、現在進行形の「気候」をそのまま室内に再現するという奇妙な試みのもとに設計されているのだという。

13キロにも及ぶパイプと3トン超の水による冷暖房システムは、まるで異国の風景を空気ごと転送する装置のようであり、もはやこれは展示ではない。小さな異国がまるごとここに引っ越してきたのだ。



それが錯覚であったのか、パビリオンの魔法であったのか、それを確かめる術はない。ただひとつ言えるのは、ここには確かにクロアチアの「今」が生きていた。万博の片隅に息づく、もう一つの気候圏。まるで夢のように、鮮やかで、静かだった。

革新的なインスタレーションではクロアチアの気候をリアルタイムで体験できます
クロアチア館では、まるでクロアチアの今の天気をそのまま体験できるような、面白いパビリオンをやっています。
クロアチア全国にある45の気象観測所から送られてくるデータを使って、5つの違う気候ゾーンの今の気温を再現しています。
なんと、13キロメートルものパイプと3トン以上の水を使ったハイテクな冷暖房システムで、クロアチアの今の気温をそのまま室内に作り出しています。
さらに、画面の下にあるQRコードをスマホで読み取ると、自分の体の熱を写したサーモグラフィー写真をダウンロードできます。(案内版)