• 万博閉幕から

tokyo1970万博体験記 ⑲ウクライナ館

tokyo1970万博体験記 ⑲ウクライナ館

バングラデシュ館の静かな余韻を引きずりながら、ふと目の前に現れた「コモンズ-C館」へと吸い込まれていった。ひとつの建物のなかに複数の国が共存しているという構造は、まるで世界の縮図のようで、その扉をくぐることは一種の精神的旅でもある。目的はひとつ、ウクライナ館。

tokyo1970万博体験記 ⑲ウクライナ館

 

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かの国はいま、風に揺れる野花のように儚く、しかしどこまでも強く、世界に自らの存在を刻みつけている。館内に足を踏み入れた瞬間、黄色と青の世界が広がる。壁や天井は深い夕陽のような黄色で染まり、展示される数々のアイテムは静かに青く光る。国旗の色をそのまま空間にしたような構成は、ひとつの詩のようでもあった。

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中央に掲げられた言葉「NOT FOR SALE」。これは単なる展示のテーマではない。ウクライナという国の尊厳、文化、命、そのすべては取引の対象ではない――そう訴える魂の言葉である。商品は並ぶが、価格は書かれていない。それは物を買うのではなく、思いを受け取る場だった。

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「見てくれ」「忘れないでくれ」と。展示は物語だった。ウクライナの今、そこに生きる人々の営み、そして奪われかけている日常への静かな怒りと誇りが、黄色と青の間に宿っていた。

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館を出るとき、私は小さな紙の心にフラッグを一枚受け取った。売られていない、買えない、けれど確かに渡されたそれは、不思議な重みを持っていた。まるで、遠くの国の心そのもののように。

投稿日:2025年7月16日

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