• 万博閉幕から

tokyo1970万博体験記 (58)スーダン

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夢洲の風が少し乾いている、と感じたとき——そこにスーダンがある。

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コモンズDの奥、その国はひっそりと息づいていた。外務省の地図で「レベル4」と赤く塗られ、「退避してください」と厳しく警告される遠い地。けれど万博という魔法の国では、そんな危険情報も入口で靴を脱いで休んでいる。ここでは誰もが安全に、“退避勧告の向こう側”へ旅立てる。

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中央には大きく“SUDAN”の文字。真昼の砂漠に立つモニュメントのように、堂々とした姿で来場者を迎える。その周囲をぐるりと囲むのは、スーダンの風景を写した数々のパネル。青く深いナイル川、夕陽に溶けるピラミッド、穏やかな微笑みを浮かべる人々。写真の中に広がる世界は、ニュースで見かける混乱や痛みとはまるで別の、静かな美しさに満ちていた。

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展示の隙間を抜けて歩くと、異国の熱気と祈りの声が空気の奥から滲み出てくるようだ。目を閉じれば、乾いた風とともに、どこか懐かしい音楽が聞こえてくる気がする。遠い地の記憶が、夢洲の空気の中にそっと流れ込む。

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スーダンという国名を聞くだけで、私たちは距離と恐れを感じる。けれどこの小さなパビリオンの中では、それがふと「ひとつの物語」に変わる。
戦火の影を超えて、砂と風の匂いが語りかけてくる——ここにも人の暮らしがあり、笑いがある。

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万博とは、そんな奇跡の見本市である。

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投稿日:2025年11月1日

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