
夢洲の真ん中に、「静けさの森」と呼ばれる不思議な空間がある。甲子園の半分ほどの広さに、1500本の木々が風をまとい、葉擦れの音を響かせていた。万博の喧騒のただなかで、そこだけは時間がゆるやかに流れ、人々はまるで森の呼吸に導かれるように足を止めた。
この森が、閉幕後もそのまま残されることになった。知らせを受けたデザイナー忽那浩樹氏は、胸の奥からこぼれるように「それが一番うれしい」と微笑んだ。彼は当初、森が更地に戻されると聞かされ、「木を植えて切ったら、命が輝かへん」と義憤を燃やしたという。テーマは“いのち輝く未来社会のデザイン”。その言葉に背くまいと、忽那氏とテーマプロデューサーの宮田裕章氏は、半ば本気で“籠城”を覚悟したほどだった。
忽那氏は万博全体の景観も手がけた。ベンチひとつ、木漏れ日ひとすじまで計算された空間で、人々が憩う姿を見て「緑を介して人が美しく見える」と感じたという。万博は展示や技術の祭典であると同時に、人が自然と調和する小さな実験でもあった。
横山市長は言う。「これからの都市づくりは、機能ではなく感性や自然との共鳴を重んじるべきだ」と。静けさの森は、その未来への試みの象徴となった。木々は伐られず、命は続く。森はやがて街と混ざり合い、夢洲の記憶をそっと包みながら、人と自然の物語を語り継いでいくのだ。
存続決まった万博の「静けさの森」、実は更地になる予定だった…「木植えて切ったら、命輝かへんやんって」
10/9(木) 6:45配信 Lmaga.jp閉幕が近づく「大阪・関西万博」のこれからについて語るプログラム『共鳴と森-突き破る塔(1970)から開かれる空(2025)へ』が、10月8日に万博内の会場で実施。プログラムには、ランドスケープデザインディレクターの忽那裕樹氏など万博に携わってきた面々が登場し、今後について明かした。
そんななか、万博会場の中心部にある「静けさの森」は、会期が終了した後も会場内に残されると発表。同プログラムで静けさの森のデザインを手がけた忽那氏は、テーマ事業プロデューサーの宮田裕章氏から同エリア存続について話題を振られると、「それが一番うれしいですね」と笑顔を見せた。
また「最初、(静けさの)森は更地にして返すって情報があって。『木植えて切ったら、命輝かへんやん』って義憤にかられて飛び込んで、宮田さんと僕で籠城してね・・・」と、存続にかける思いを明かした。
忽那氏は、静けさの森だけでなく万博全体の景観作りも担当しており、「座る空間は全部作ったんですけど、そこに座っている人が緑を介してすごく美しく見えるという。その空間を使いこなしてる人たちの、ありとあらゆる姿が見えて。それが僕たちにとって感動的でした。(万博に)毎日行くようになった人の話も聞いたんですけど、『遊びに行ってるだけでも面白い』という意見はすごくうれしかった」と語っていた。
(存続決まった万博の「静けさの森」、実は更地になる予定だった…「木植えて切ったら、命輝かへんやんって」(Lmaga.jp) – Yahoo!ニュース)
万博遺産「静けさの森」新たな一歩、「静けさの森 共鳴機構」始動
10/15(水) 8:20配信 週刊大阪日日新聞13日に閉幕した大阪・関西万博。多くの建築物が解体される一方、会場中央の緑地「静けさの森」は会期後も植栽を残す方針が示されている。
8日に会場内スタジオで開かれた公式プログラム「共鳴と森―突き破る塔(1970)から開かれる空(2025)へ」では、テーマ事業プロデューサーの宮田裕章氏、会場デザインを手がけた建築家の藤本壮介氏、「静けさの森」のランドスケープデザインを担当した忽那裕樹氏、「Better Co-Being」エリアの建築を担った建築ユニットSANAA(妹島和世氏・西沢立衛氏)らに加え、大阪市の横山英幸市長も登壇。万博の成果や思い、今後の構想を語った。
存続の経緯について、忽那氏は「最初は更地に戻すという話もあった。『木を植えて切ったら命が輝かない』と、宮田さんと一緒に籠城も視野に粘りました」と、万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」になぞらえ当時のやりとりを明かした。
横山市長は「これまでの日本の都市づくりは機能性を重視してきたが、これからは人の感性や自然との共鳴を大切にするまちづくりが必要」と述べ、「まさにこの〝静けさの森〟のような場所を都心の中でもどう作っていくのか今後も考えていきたい」と語った。
(万博遺産「静けさの森」新たな一歩、「静けさの森 共鳴機構」始動(週刊大阪日日新聞) – Yahoo!ニュース)
【万博】運営収支は最大280億円の黒字ですが…“大屋根リング”“静けさの森”レガシーをどう残す?
2025年10月8日 19:10 YTV NEWS NNN黒木千晶キャスター
「この静けさの森の木々の一部が、万博閉幕後もレガシーとして残されるということです」
会場の真ん中にある「静けさの森」。甲子園球場の敷地全体の半分にあたる 2.3ヘクタールほどの広さに約1500本の木が植えられています。
万博会場では8日、「静けさの森」の設計を担当したデザイナーらが集まり、意見交換が行われました。
宮田裕章 氏
「万博の後、どうしていくんだということですよね」
忽那浩樹 氏(植栽のデザインを担当)
「森が、最初は(万博後に)更地にして返す、なくなるといういう情報があって、『木を植えて切ったら、命輝けへんやろ』という義憤に駆られて。ここで籠城して残そうかという話もしていた」
大阪府・市は今後、跡地開発の事業者を公募で決定しますが、事業者に対し、静けさの森の木々の一部を残して街づくりに生かす案を求めるということです。
京都大学・山極壽一 前総長
「静けさの森が生物多様性の象徴であるならば、大屋根リングは文化的多様性の象徴であります。そのレガシーを将来に残すために、やはり2つの象徴的な場所は残していかなければならない」
(【万博】運営収支は最大280億円の黒字ですが…“大屋根リング”“静けさの森”レガシーをどう残す?(2025年10月8日掲載)|YTV NEWS NNN)