
万博の喧騒を抜け、ふと足が止まる。それは未来社会のパビリオンでも、異国の展示でもない。「くら寿司」である。万博に来て寿司を食べるという、この逆説的な愉しみを求めて、多くの人が関心を持つ。

予約サイトではすぐに埋まり、1ヶ月前に奇跡的に取れたその枠は、まるで特等席への入場券のようだった。

「寿司パビリオン」と呼びたいこの万博限定のくら寿司は、「回転ベルトは、世界を一つに。」という壮大な理念を掲げている。

中に入ると、135メートルにも及ぶ回転ベルトが目の前を滑るように走る。その上を、サーモンも、ローストビーフも、ハンバーガーまでもが流れてくる。寿司が世界を巻き込み、世界が寿司に巻き込まれる。338席を埋め尽くす客たちは、誰もが回転のリズムに取り憑かれたように皿を見つめている。


ハンバーガーと寿司が同じレーンを回る——それは文化の衝突ではなく、ひとつの調和であった。回転レーンの上には国境も言語も存在せず、ただ「おいしい」という感覚だけが流れていく。


「世界のくら寿司」対「未来のスシロー」。夢洲では、そんな奇妙で愉快な寿司比べが起こっている。万博の理念「いのち輝く未来社会のデザイン」を、もし食で表すなら、このベルトの上を回る皿たちなのかもしれない。




寿司の一皿が世界を巡り、人々をつなぐ。帰り際、皿のきらめきがふと万博の夜景と重なった。未来の味とは、案外こういうささやかな回転の中にあるのだろう。