• 万博閉幕から

tokyo1970万博体験記 ㊺カタールパビリオン

カタールパビリオン

夢洲の海風を背に歩いていくと、ひときわ静かに輝く館がある。水面に浮かぶ蜃気楼のようなその姿――それが「カタールパビリオン」である。

カタールパビリオン

まるで砂漠の国がそのまま一粒の結晶となって日本へやってきたかのようだ。入口をくぐると、外の喧騒は遠くかすみ、空気の密度が変わる。そこは、砂と光と時間の世界。

カタールパビリオン

足元には柔らかな砂の道。壁には、風が描いたような模様が浮かび上がり、やがて砂そのものが物語を語り始める。

カタールパビリオン

 

カタールパビリオン

人の手による「砂のアート」は、たった一瞬の風でも姿を変え、見る者の心を奪う。砂はこの国の記憶の粒であり、ひとつひとつに過去の旅人たちの息づかいが宿っているようだ。

カタールパビリオン

 

カタールパビリオン

展示の奥へ進むと、昼と夜の境が溶けあう。砂丘の曲線に似た天井が緩やかに光を反射し、訪れる者を包み込む。やがて現れるのは、果てしない夜空の再現――無数の星が静かに瞬き、砂漠に眠る旅人の夢を照らしている。遠く、星座のひとつがゆっくりと動き、まるで砂の上に天の川が降りてきたようだ。

カタールパビリオン

 

カタールパビリオン

 

カタールパビリオン

外に出ると、夢洲の風がまた頬を撫でる。だがその瞬間、自分がほんの少しだけ、遠い砂の国を旅してきたような錯覚に包まれる。大阪の海とカタールの砂漠――交わるはずのない世界が、ここでは一つに溶け合っている。

投稿日:2025年10月13日

“tokyo1970万博体験記 ㊺カタールパビリオン”の関連キーワード