• 万博閉幕から

tokyo1970万博体験記 ㉕イスラエル

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スロバキアのパビリオンを後にして歩みを進めると、隣に佇むイスラエルの空間に出会う。
コモンズ-Cの一角、そこは一見すると涼やかな白い光に包まれた小さな部屋にすぎない。しかし一歩足を踏み入れた瞬間、空気の密度が変わる。ここには、時が積もっている。

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イスラエルといえば、世界有数のスタートアップ国家。人口あたりのテクノロジー企業数では他国を圧倒し、ハイテクの国として名を馳せる。その未来志向の精神は、壁面の映像や展示の端々にまで滲み出ている。だが、驚くべきはその中心に据えられた、ひとつの石である。

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それはただの石ではない。大阪・関西万博のため、はるばる古代エルサレムから空を越えてやってきた石。紀元前の時代に築かれたハスモン朝の要塞の一部だったそれは、二千年の歳月をくぐり抜け、今ここにひっそりと鎮座している。タイトルは「Forever」。その名の通り、過ぎ去りし時間とこれからの未来を結びつける、無言の証人のようだ。

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このパビリオンには、派手な音楽も、まばゆい光もない。ただ静かに、しかし確かに、永遠の存在が息づいている。最先端の技術と古の記憶が交差するその場に立つと、人は不思議な感覚にとらわれる。ここは過去を振り返る場所ではない。むしろ、未来を見通すための石が、私たちに黙って問いかけているのだ。
夢洲にあって、もっとも時間が深い場所。それがイスラエル館である。

投稿日:2025年7月24日

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