
夢洲の未来を見に来たはずなのに、足を踏み入れたその建物は、時を逆さに流れるようだった。
「Dialogue Theater –いのちのあかし–」。
そこは、廃校となった小学校を復元した不思議なパビリオンだった。木の香りが残る廊下、時代の埃をかぶった黒板、どこか懐かしくて、まだ生まれていない自分の幼き記憶がふと呼び覚まされるようだった。

まるで旧校舎の教室がそのまま未来の劇場に転じたような空間が広がっていた。




シアターの扉を開けるとスクリーンには一人の男が映り、こちらを見据えながら悩みを吐き出している。声が震え、影が揺れる。やがて、親父のような温かい声がその言葉を受け止め、まるで遠い昔から届く人生の手紙のように答えを紡いでいく。時間がゆっくりと解け、万博という未来の祭典の真ん中で、自分自身の心が古びた校舎の中に迷い込んでいく。




未来を見に来たはずなのに、過去が息を吹き返し、悩みと対話し、誰かの人生に触れる。
この不思議な劇場で、心は知らぬうちに揺さぶられ、静かに変わっていく。
夢洲の真ん中で、未来と過去がひとつに溶け合う。
ここに来なければ、きっと出会えなかった物語が待っている。