• 万博閉幕から

tokyo1970万博体験記 ㉙3日目

tokyo1970万博体験記 ㉙3日目

夢洲に足を踏み入れるのも、これで三日目。西口ゲートに着いたのは、まだ午前十一時。空は眩しく、照りつける太陽が万博の屋根を金色に輝かせている。けれど、帰りの飛行機の時間は刻一刻と迫り、十四時半には夢洲を去らねばならない。まるで押っ取り刀で駆け抜ける旅人のような一日が始まった。

二か月前、石黒パビリオンに夢をかけて抽選に申し込んだ。あの日の自分は、未来を覗き込む扉が開くと信じていた。けれど結果は無情に落選。
だが、昨日、当日予約の奇跡に導かれ、ついにその扉をくぐった。展示の光と影が胸に刻まれ、敗北からの逆転劇に小さな誇りが芽生えた。今日の旅は、その勝利の余韻を抱きしめながら、さらに深く万博の森を歩むためのものだ。

七日前、指先がわずかに震えるほどの思いで予約を入れた「Dialogue Theater –いのちのあかし–」。河瀨直美が描く“命の物語”は、万博という巨大な舞台の中でも、ひときわ静かで、けれど強く光ると聞く。今日はその物語に身を委ね、時間を忘れて命の声を聴くつもりだ。

そしてもうひとつ、心を惹きつけてやまないのがスイス館。雪解けの水が光をまとい、アルプスの風が吹き抜けるような展示が広がるという噂が耳に届いている。
限られた数時間の中で、その白い扉を開き、スイスの未来と自然の息吹を感じたい。

三日目の万博は、もはや単なる観光ではない。落選の悔しさ、偶然の幸運、未来を見たいという焦がれる思いが重なり、ひとつの物語になりつつある。夢洲の空には、まだ見ぬ驚きが隠れている。限られた時を抱えながら、私はまた歩き出す。未来を掴むために、そして夢洲が描く物語の続きを、この目で見届けるために。

投稿日:2025年8月6日

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