• 万博閉幕から

tokyo1970万博体験記⑤ 大屋根リング

tokyo1970万博体験記⑤ 大屋根リング

「人間にとっては小さな一歩だが、自分にとっては偉大な一歩だ。」

tokyo1970万博体験記⑤ 大屋根リング

かつて憧れた1970年の大阪万博。その幻を追い続けて幾年月、ついに私は令和の夢洲にたどり着いた。
その最初の一撃が、「大屋根リング」である。

tokyo1970万博体験記⑤ 大屋根リング

どれほどの情報がネットにあふれていようと、やはり実物を目の前にした衝撃には勝てない。写真で知った気になっていた自分を、実物のリングが鼻で笑ったような気がした。

tokyo1970万博体験記⑤ 大屋根リング

夢洲の空に浮かぶ、巨大な円環――それが「大屋根リング」だ。
地図ではただの円、写真では幾何学的な飾り。模型で見れば未来的な装身具のようにも思える。だが、現地でその下に立つと、それらはすべて幻想だったと知る。
想像のリングは儚い影となり、実物のリングが現実を塗り替える。

tokyo1970万博体験記⑤ 大屋根リング

太陽の塔が異形の存在感で心を鷲掴みにするなら、大屋根リングは無言の威厳で人間を飲み込む。青空を切り裂くように広がるその環は、未来の門か、天空から舞い降りた神具か。何か大きなものに見下ろされているという感覚が、じわじわと背筋を登ってくる。

tokyo1970万博体験記⑤ 大屋根リング

このリングの有無で、万博の景色は根本から異なるものとなるだろう。
仰ぎ見るたび、自分が未来都市の中の点景に成り果てたような感覚に包まれる。
その下には、整然と並ぶ無数のベンチ。風が吹き抜け、涼しさが都市の喧騒を洗い流す。

tokyo1970万博体験記⑤ 大屋根リング

世界最大の日傘は、日差しだけでなく、私の日常までも遮ってくれた。
気がつけば、ここに立っているだけで旅の半分が終わったような気がしていた。

令和のべらぼー、確かにここにある。

投稿日:2025年6月29日

“tokyo1970万博体験記⑤ 大屋根リング”の関連キーワード