
9月1日。ふたたび夢洲の大地へ足を踏み入れることになった。
今回は2日間にわたる万博行脚。しかしここに至るまでの道のりは、まさに茨の道であった。
2ヶ月前の抽選に敗れ、7日前の抽選にも敗れ、さらに空き枠先着という最後の綱にもするりと逃げられ、残されたのは己の執念と、わずかな運を頼りにするしかない「裸一貫の入場」であった。
事前予約という文明の利器は、前回の苦い体験から何ひとつ学習しておらず、紙切れのように虚しく散った。
それでも人間の経験値とは不思議なもので、失敗の積み重ねこそが目に見えぬ力を育てる。つまり今回は、確実に「実体験レベル」が上がっているに違いないのだ。
午後2時、西口ゲート。炎天下に汗をにじませながら、私はひそかに今日の攻略ルートを胸に刻む。
まずは東欧の気配を漂わせるチェコ館。続いて、カスピ海の風を運ぶアゼルバイジャン館。そして最後に待ち受けるのは、行列必至のアメリカ館。そこには人々の夢を呑み込む怪物のような待ち時間が待ち構えていることを、私はすでに覚悟していた。
万博とは、世界を旅するのではなく、世界そのものに試される舞台なのだ。
抽選に敗れようが、予約を逃そうが、そこに立ち尽くした瞬間から物語は始まる。
夢洲の地で、私はまたひとつ、自分だけの「小さな世界一周」を描き出そうとしていた。