• 万博閉幕から

tokyo1970万博体験記 ㉜アラブ首長国連邦館

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帰りの時間が刻一刻と迫り、心の奥に小さな焦燥の鐘が鳴っていた。
もうひとつ、せめてひとつだけ、この日の記憶に新たな色を加えたい――そんな思いに導かれるように足を進めると、まるで導かれたかのように、待ち時間ゼロのアラブ首長国連邦館が目の前に口を開けていた。

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「大地から天空へ」という言葉が入口に掲げられている。内へ足を踏み入れた瞬間、目の前に広がるのは、ひかりを纏ったナツメヤシの林だった。根を地中深くまで張り、乾ききった大地をその掌のような葉で覆い、なお大空に向かってすっと伸びる姿。そこには、厳しい自然と向き合いながら、寛容さと誇りを失わずに生きる人々の魂が息づいていた。

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その林を進む道は、不思議なほど静かで、足音がやわらかく吸い込まれていく。葉の間から差す光は、時折、砂漠に降る幻の雨のようにきらめき、通る者の胸にじんわりと沁みる。気づけば展示の説明はほとんど頭に入らず、ただナツメヤシの林の奥へ奥へと、夢中で分け入っていた。

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出口に立ったとき、時間は確かに減っていたのに、不思議と心は広がっていた。大地と天空を結ぶ木のように、自分もまた何かへ向かって伸びていけるような気がしていた。

投稿日:2025年8月9日

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