• 万博閉幕から

tokyo1970万博体験記④ 西ゲートか東ゲートか

tokyo1970万博体験記④ 西ゲートか東ゲートか

東か西か、それが問題である。

tokyo1970万博体験記④ 西ゲートか東ゲートか

万博を目指すその朝、私は地下鉄の車内で軽く後悔していた。午前十時過ぎの列車はすでに満員御礼。車両の奥深くに押し込まれ、身動き一つままならぬ。だがふと視線を上げれば、銀色の内装に未来的なパネル――そう、それはまるで夢洲行きの宇宙船。
混雑の不快と、未来に触れる高揚が胸中でせめぎ合い、私は宙に浮いたような気分に浸っていた。七割の来場者が東ゲートを選ぶというのもむべなるかな。人は宇宙に惹かれる。

tokyo1970万博体験記④ 西ゲートか東ゲートか

翌朝、私は思い切って西ゲート行きを選んだ。シャトルバスの乗り場へと向かい、乗車。
列をなして滑るその姿は、まるで静かな大河。道路を走る車列が、ひとつの生命体のようにぬるりと進んでいく様は、ある種の美しさすら感じさせた。

tokyo1970万博体験記④ 西ゲートか東ゲートか

その道中、突如として現れる異形の建築物――大阪広域環境施設組合舞洲工場は、まるで魔法使いの塔。
万博の前に、すでにファンタジーが始まっている。

KANSAI MaaSで仕込んでおいたチケットを提示し、スムーズに手荷物検査へ。
X線装置の前で、私は静かにペットボトルとKindleを取り出した。荷を通し、QRコードをかざす。
刹那、閃光のような電子音とともに、ゲートが開く。
私はついに夢洲へと足を踏み入れたのだった。

ここから先は、紙幣も硬貨も通じぬ異国の地。現金の概念は霧散し、スマートフォンの中にすべてが宿る世界。
そう――大阪・関西万博とは、ただ訪れるものではない。
ひとは万博に飲み込まれ、やがて、異界の一部となる。

tokyo1970万博体験記④ 西ゲートか東ゲートか

投稿日:2025年6月28日

“tokyo1970万博体験記④ 西ゲートか東ゲートか”の関連キーワード