
万博の喧騒を抜け出した一つの装置が、古都奈良へと静かに帰還する。アースマートで人々の足を止めた「いのちのはかり」は、平城宮跡の空の下、天平みつき館に据えられ、食べ物の背後に広がる時間と労苦を語り始める。食品サンプルを置けば、数値と映像が立ち上がり、自然と人の営みが一皿の向こうに浮かび上がる仕掛けだ。
万博という未来志向の実験が、千年の歴史を抱く宮跡に根を下ろす光景は不思議に似合っている。蜂蜜一滴に込められた季節の巡りを知ったとき、奈良の風景もまた違って見えるだろう。観光と学びが交差するこの場所で、食べるという行為は小さな巡礼へと変わっていく。
大阪万博・小山薫堂パビリオン「いのちのはかり」、奈良市内で展示へ
2026年1月26日 17:53 日本経済新聞奈良県は、大阪・関西万博で人気を集めたシグネチャーパビリオン「EARTH MART(アースマート)」にあった体験型展示「いのちのはかり」を平城宮跡歴史公園(奈良市)内の施設「天平みつき館」へ4〜5月をめどに設置すると発表した。万博終了後の設備などを有効活用するため、出展者と引受先をマッチングする日本国際博覧会協会のサイト「万博サーキュラーマーケット ミャク市!」を使って譲渡を受けた。
「いのちのはかり」に食品サンプルを置くと、食材の背景にある人間や自然環境の営みをアニメーションで解説し、環境コストがわかる仕組み。例えば蜂蜜を置くと「ミツバチが一生かけて集める蜂蜜はわずか5グラム」と表示する。
人気パビリオン「アースマート」の中核的な展示のひとつが「いのちのはかり」だった(大阪市)
「アースマート」は放送作家の小山薫堂氏がプロデュースしたパビリオンで、「いのちのはかり」は中核展示のひとつだった。「ミャク市!」では6台が募集され、奈良県はうち5台を譲り受けた。
奈良県は「いのちのはかり」の披露イベントを2026年のゴールデンウイークを中心とする時期に開催する方向でこれから調整する。平城宮跡歴史公園は奈良県を代表する観光拠点のひとつだ。万博レガシー(遺産)を活用することで、奈良の食文化を発信する拠点となるだけでなく、観光客や子供らの学びの場となることが期待される。
(大阪万博・小山薫堂パビリオン「いのちのはかり」、奈良市内で展示へ – 日本経済新聞)