
大阪・関西万博が幕を閉じて二週間。かつてあの大屋根リングの下に光っていたウクライナのブースでは、静かに撤収作業が進んでいた。
戦火に覆われた国が掲げたテーマは「NOT FOR SALE ― ウクライナの価値は売り渡せない」。そこには兵士のリュックや、庶民が使っていた食器、擦り切れた靴など、戦場と日常の境界をにじませる品々が並んでいた。訪れた人々はただの展示としてではなく、「今も続く現実」として、その重みを受け止めた。
閉幕後、館長のインナ・イリナ氏は言った。――施設は消えても、記憶まで消してはならない。ミサイルが降り注ぐ中でも人々は暮らし、光を手放さずにいるのだと。
その思いに応えたのが、神戸学院大学だった。ウクライナ名誉領事館を構えるその場所に、展示の一部が受け継がれることになった。10月27日の朝、戦場をくぐり抜けたヘルメットや生活の残滓が静かに運び込まれた。
十一月から、希望者は事前申し込みのうえで見学ができるという。万博の喧噪は去っても、あの展示に込められた声はまだ終わらない。世界の片隅で、誰かがその声に耳を澄ませるかぎり。
万博でウクライナの暮らしを伝え続けた展示品が神戸学院大学へ 「大阪・関西万博のレガシーとして意義があるんじゃないか」
10/27(月) 17:15配信 MBSニュース2022年2月からロシアによる軍事侵攻が始まったウクライナ。万博では、複数の国などが入る「コモンズC館」の一角にブースを設け、“NOT FOR SALE”「ウクライナの価値は売り渡せない」というテーマのもと、兵士が持っていたリュックや庶民の生活用品を展示。戦禍でのウクライナの人たちの暮らしぶりを生々しく伝え、連日、多くの人が訪れました。
万博から施設はなくなりますが、ウクライナ館の館長は、閉幕後も展示品の一部を残し、軍事侵攻の悲惨さを伝え続けたいと話します。
(ウクライナ館 インナ・イリナ館長)「最近は攻撃も激しくなってきて。ウクライナ人は一生懸命頑張って、毎日のように停電やミサイル攻撃があるときはすごく頑張っているので、ウクライナのことを忘れないでほしい」
そこで手を挙げたのが、ウクライナの名誉領事館が置かれている神戸学院大学。万博の展示品の一部を学内で展示することになり、10月27日朝、搬出作業が行われました。そして、約1時間後、展示品が大学に到着しました。
ウクライナ館から引き取った兵士が使っていた損傷したヘルメットなど、7つの展示品が名誉領事館のあるフロアに並べられることになります。
ウクライナ館の展示品の見学は、11月から申し込みを始める予定で、一般の人は事前申し込み制だということです。
(万博でウクライナの暮らしを伝え続けた展示品が神戸学院大学へ 「大阪・関西万博のレガシーとして意義があるんじゃないか」(MBSニュース) – Yahoo!ニュース)