2026年7月12日、錦糸町のLive House rebirthで松岡英明「The One × Complete#09《Eyes of The Einstein Zoo》」。入ってみれば、まさかの最前列だった。ライブハウスへ行く理由のひとつは、スーパースターとの信じられない距離感にあるのだが、最前列ともなると信じられなさが少々やりすぎである。
近い。松岡英明の動きも表情も、こちらへ届くまでに何も挟まらない。せっかくの最前列なのだから存分にノればよいのに、もともとのリズム感の無さに加え、一瞬一瞬を逃すまいとして、私はほとんど直立不動になっていた。
松岡さんが言っていた「ノってない」というのは、もしかしたら自分のことなのか。自意識過剰だとは思うが、最前列には自意識まで近くなる作用があるらしい。正直スマン、という気持ちだけは重い健介である。
「Opening (Scene from Paradise)」から「Eyes of the Einstein Zoo」へ進み、アルバムの曲が目の前で形になっていく。中でも「Eyes of The Einstein Zoo」は、生で歌うのは難しいというか、これは大変だなあと、聴きながら妙なところで実務的な心配をしてしまった。心配したところで私が代われるわけでもない。
「Fly Sky-High」に続いて「Stay」。この曲については、あとから押っ取り刀で説明文を読んだ。Duran Duranのフロントマン、サイモン・ル・ボンのために盟友ニック・ウッドが書き下ろしながら未発表となっていた曲を、松岡英明のボーカルで完成させたものだという。
それを知ってあらためて聴いてみると、もろDuran Duranである。コッヒーのプリンスと張れるぐらいだ。リクエストのときに悩んだ1曲でもあり、それが最前列の距離で歌われているのだから、こちらとしては都合よく選曲への参加意識まで持ち始める。
「Here Comes the Wild Times」「Virgins」と進み、「理由なき反抗」では反抗が過ぎてしまったのか、機材を倒してしまうアクシデントが起きた。曲名に引っ張られて見れば出来すぎているが、目の前で起きた以上、こちらは見逃すまいとさらに直立不動になる。ノることと凝視することを同時にできない自分が、こういうときだけ少し恨めしい。
「神々の黄」「Visions of Boys -Under the moonlight-」まで終わり、インターバルを挟む。ここまでで「Eyes of The Einstein Zoo」はきっちり聴いた。では、このあと何が歌われるのかと、今度は続きを待つどきどきが始まった。
「Kiss Kiss」から「夜と星の列車 -Night with her train of stars-」、「Because We Love You」と曲が続く。アルバムを聴く時間から、その日の公演全体を受け取る時間へ、いつの間にかこちらの頭も切り替わっていた。最前列で直立不動のままなので、外から見て切り替わったかどうかはまったく分からないと思う。
そして「お気に召さないか?」が来た。リクエストのときに悩んだ「Stay」と、この「お気に召さないか?」。もうお腹いっぱいである。
もちろん公演はそこで終わらず、「コズミック・パズル」、アンコールの「Your Love is My Sin」「Study After School (In the House)」まで続いた。こちらも最後まで、一瞬を逃すまいと目の前の松岡英明を追い続けた。ノっていないように見えた疑惑は残るが、最前列で「Stay」と「お気に召さないか?」を受け取った満足まで疑う必要はない。