
銀座の街角に、ひそやかに波が満ちている。山野楽器のピアノフロアに姿を現したのは、大阪・関西万博のオーストリア館でひときわ人目を奪った、あの「神奈川沖浪裏」ベーゼンドルファーだ。
黒々としたグランドピアノの屋根を開けると、江戸の海が静かに目を覚まし、青い飛沫が天井へと舞い上がるように見える。
世界でたった16台。側板の内側に沈んだロシアンブルーは深海のようで、譜面台の赤い署名は北斎の息づかいを伝えるように鮮やかだ。拍子木のそばには真鍮のシリアルプレートが埋め込まれ、触れれば小さく熱を帯びて返ってくる気がする。
さらにこのピアノは、自動演奏機能を秘め、ラフマニノフやルービンシュタインといった巨匠の手つきをそのまま呼び起こす千曲もの記憶を宿している。
眺めるだけで胸がざわめき、音を聴けば心が波にさらわれる。銀座に漂着したこの一台に会いに行けば、自分の中の海がまたひとつ、静かに広がっていく気がする。
大阪・関西万博で注目されたグランドピアノを展示販売 山野楽器、ウィーンの名門ブランドに北斎の浮世絵
11/11(火) 11:46配信 オーヴォ山野楽器(東京都中央区)は、大阪・関西万博オーストリアパビリオンでの展示で注目された特別モデルのベーゼンドルファー グランドピアノ「The Great Wave off Kanagawa(神奈川沖浪裏)」を11月30日まで山野楽器銀座本店のピアノフロアで展示し、販売する。
同ピアノは、ウィーンの名門ピアノブランド「ベーゼンドルファー」のラインアップの中で世界的に最も人気のあるVCシリーズ「214VC」をベースに、屋根の内側に江戸時代に活躍した浮世絵師、葛飾北斎の代表作「神奈川沖浪裏」を描いている。側板の内側は、浮世絵の色彩テーマとなっているロシアンブルーを、またフレームと譜面台に施された葛飾北斎の署名は赤色を使用した。全世界16台の限定生産で、鍵盤左側の拍子木部分にはシリアルナンバー入りの真鍮(しんちゅう)プレートが埋め込まれている。
自動演奏機能を搭載し、ベーゼンドルファーアーティストやラフマニノフ、ルービンシュタインなどのピアニスト本人による演奏も含め1000曲以上のデータを備えている。メーカー希望小売価格は税込み4994万円。
(大阪・関西万博で注目されたグランドピアノを展示販売 山野楽器、ウィーンの名門ブランドに北斎の浮世絵(オーヴォ) – Yahoo!ニュース)