• 万博閉幕から

tokyo1970万博体験記 ㊴アメリカ

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夢洲の潮風に吹かれながら、ついに足を運んだアメリカ館。青白い曇天の下、東ゲートから続く列は蛇のようにゆらめき、気が遠くなるほど長く伸びていた。70分待ちは幸運だと誰かがつぶやく声が聞こえる。

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確かに、覚悟していたよりも早い入場だったはずなのに、じりじりと焼ける舗道の上で過ごした時間は、万博の伝説を自らの足で刻みつけるための通過儀礼のようでもあった。

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館内へ一歩踏み入れると、まず視界に飛び込んでくるのは、あのトランプ大統領の巨大なパネルだ。誇らしげな笑みが、これぞアメリカという大胆さを声高に語りかけてくる。

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続いて現れるのは、宇宙を駆けるロケットや、世界を驚かせた大谷翔平の雄姿。政治もスポーツも未来も、すべてをひとつに飲み込んで、万博という祭典にふさわしい派手な演出で来場者を翻弄する。

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奥に進むと、360度のスクリーンに映し出されるロケット発射のシアターが待ち受けている。轟く爆音が床を震わせ、光が一斉に視界を焼き、身体そのものが打ち上げられるような錯覚に包まれる。

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夢洲の地を離れ、未知の宇宙へ飛び出す一瞬の幻。その高揚は、かつて人類が月に到達したときの興奮を、現代に呼び戻すかのようだ。

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そして静寂の奥、1970年の大阪万博で伝説を生んだ「月の石」が、ひっそりと展示されている。ガラス越しに覗くその小さな欠片は、派手なパビリオンの喧騒とは対照的に、ただ黙して遠い宇宙の孤独を語る。
人類が初めて踏みしめた月面の砂粒。その冷たい灰色は、半世紀を経てもなお、見る者の心に無限の広がりを呼び覚ます。

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華やかさと静謐さ、地球と宇宙、過去と未来。すべてが交錯するアメリカ館は、長時間並んだことさえ報われる祝祭そのものだ。入場の達成感と、宇宙に触れたかのような余韻を胸に、外に出たとき、夢洲の空はいつもより少しだけ高く澄み渡って見えた。

投稿日:2025年9月21日

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