
万博とは理性の迷宮である。どこまでが夢で、どこからが現実なのか、あるいは最初から全てが幻想だったのか。それすら曖昧なまま、あの人工島ではパビリオンが次々と姿を現し、あるいは消え、あるいは未完のまま夕暮れに溶けていく。
特に異彩を放つのが、幾つかの海外パビリオン群である。美しく仕上げられた外装の裏で、静かに、しかし確実に積み上がってゆくのは、未払いという名の“債務の塔”。とりわけ、フランスの香りを漂わせる大企業GL events Japanが手がけた建造物は、華麗な姿の裏に、金銭的な幽霊が住み着いているというのだ。
ルーマニア、セルビア、ドイツ、マルタ――地中海の風を連れてやってきた国々のパビリオンが、日本の空の下で謎めいた沈黙を守っている。大阪のとある建設会社は、契約通り建てたにもかかわらず、完工金1億2500万円が支払われず、開幕直前まで血と汗をにじませて建設した職人たちは、いまだ陽の当たらぬ書類の森を彷徨っている。
しかも、請求書を送れば「検討中です」、再請求をすれば「契約違反です」と返される。まるで芝居の脚本が入れ替わるように、現実がきしんでいる。電話も通じず、メールも虚空に消え、東京から大阪へ、そしてまた東京へと、情報は蜃気楼のように逃げてゆく。
それでも、このパビリオンを見に行きたい。真夏の陽光を反射するルーマニアの館、完成を果たしたにもかかわらず、まるで誰にも祝福されぬような影を纏っている。そう、万博とは希望と矛盾のアーケードだ。
GL社は愛知のアジア大会にも関わっているという。ならばいっそ、未来の博覧会を見に行く前に、いまの“未払いの殿堂”を目撃しておくべきではないか。この国の祝祭の裏側に潜む現実を、真昼の夢として噛みしめるために。
大阪・関西万博のパビリオンで3億円超の工事代金未払いを出したGLイベンツ社とは
7/2(水) 6:31 幸田泉大阪・関西万博の海外パビリオン建設を巡り、次々に「工事代金の未払い」が発覚している。中でも金額が大きいのは、イベント会社「GL events Japan」(本社・東京港区)による未払いだ。GL社はフランス資本の大企業で、日本法人は2016年に設立。ルーマニア、セルビア、ドイツ、マルタのパビリオンを元請けしていたが、下請け業者らによるといずれも未払いがあり、被害者の訴えを合計すると3億円を超える。6月23日に、四つのパビリオンの被害者らが記者会見し、「GL社は『このままでは開幕に間に合わない』と助けを求めて来て、協力させるだけさせて、支払いになると手のひらを返す。いったいどういう会社なのか」と口をそろえた。
ルーマニアパビリオンの一次下請け、大阪府内の建設会社S社は、昨年10月、建設工事をGL社から4億4000万円で請け負った。この建設会社の取締役によると、契約金、着工金、中間金は支払われたが、完工後、30日以内に支払われるはずの完工金1億2500万円が未払いのままだという。
万博開幕3日前の4月10日に完成し、開幕した4月13日にGL社に完工金の請求書を送付した。支払いがないため、再三にわたって電話やメールで請求しており、それに対しGL社は「検討中なのでもう少し待ってほしい」と回答していた。ところが、6月中旬に「契約違反があるので、契約を解除する」という書類が送られてきたという。取締役は「すぐGL社に行き、契約違反とは何なのか聞いたが、『責任者がフランスに帰っている』と何の回答もなかった」と話す。この建設会社は別の海外パビリオンの建設をしていたところ、GL社から「ルーマニアもやってほしい」と頼まれて引き受けることになった。「図面はいいかげんだし、工事が始まってからも変更だらけ。全部で100カ所ぐらいあった。すべて言われた通りにして仕上げたのに契約違反だという。工事が終わってから契約解除なんてあり得ない」と怒り心頭だ。
ルーマニアとセルビアのパビリオンで内装工事をした大阪府内の建設会社D社は、ルーマニアで約2300万円、セルビアで約2400万円が未払いになっている。D社の幹部は「パビリオンはオープンして、みんな展示を楽しんでいるのに、工事代金は払われない」と嘆く。GL社は6月後半、「クライアントが展示を気に入らず、我が社もお金をもらっていないので、D社にも払えない」と説明したという。
ドイツのパビリオンで職人を集めた大阪府内の不動産会社E社は、この人件費約1000万円がGL社から払われていない。E社幹部は「GL社から『人が足りない』と言われて集めた。人件費の踏み倒しは人権無視の所業だ」と憤る。E社はセルビアのパビリオンにもかかわっており、重機などのリース代、燃料代などのうち約3150万円がGL社から払われていない。幹部は「GL社の財務担当とは何度もやり取りしたが、まもなく支払うかのように引き延ばすだけだった。GL社のような大きな会社がこんなことをするとは、信じられない」と話す。
GL社はホームページによると、日本では東京に2カ所、愛知に1カ所、大阪に1カ所、オフィスがある。筆者は東京のオフィスに電話して未払い問題について取材しようとしたが、「ここでは情報がない。大阪オフィスに聞いてください」とのことなので、大阪オフィスの電話番号を確認した。しかし、この番号にかけても「ただ今、電話に出られません」とアナウンスが流れる。未払いの被害者から取締役の電話番号とメールアドレスを聞き、電話してみたが留守番電話になり、メールにも返答はない。
7月1日、在阪ジャーナリスト数人でGL社の大阪オフィスを訪ねた。対応した男性は「アポなしで来られても対応できない」と言う。「公表されている電話番号はいつもつながらない。どの番号に電話すればアポが取れるのか」と何度聞いても、「上司に伝える」としか回答しない。会社とは思えない対応は、工事代金未払いの被害者の嘆きと共通する。
(大阪・関西万博のパビリオンで3億円超の工事代金未払いを出したGLイベンツ社とは(幸田泉) – エキスパート – Yahoo!ニュース)
アジア大会の会場設営も担当…万博で建設費未払いが指摘されている元請け会社 大村知事「事実関係を把握し対応」
7/15(火) 21:25配信 東海テレビ万博のパビリオンの建設費未払いを指摘されている元請けの会社が、アジア大会の会場設営も担当する外資系企業であることがわかりました。
大阪・関西万博では、マルタ館やドイツ館など外資系イベント会社「GL events」が元請け企業となったパビリオンで、建設費が未払いとなるトラブルが相次いでいます。
「GL events」は、2026年秋に愛知県などで開かれるアジア大会でも競技会場の設営などを630億円で委託されていて、大村知事は大会組織委員会として事実関係の報告を求めていると明らかにしました。
(アジア大会の会場設営も担当…万博で建設費未払いが指摘されている元請け会社 大村知事「事実関係を把握し対応」(東海テレビ) – Yahoo!ニュース)