REVISITED 2026

野宮真貴@Billboard Live東京 2026

野宮真貴@Billboard Live東京 2026

野宮真貴のデビュー45周年前夜祭。長いあいだ一度は行ってみたいと思いながら、なぜか機会を逃し続けてきたライブである。今回はゲストに小泉今日子が登場すると知り、慌てて情報を探した。ところが、気づいたときには満席。東京の夜は、こちらの都合に合わせて席を取っておいてはくれない。

それでも諦めきれず、何度かチケット画面を覗いた。すると、あるとき空席がふっと現れた。満席だった画面に席が一つ生まれる。その小さな変化が、この夜の最初の演出だったように思う。歌を聴くより前から、すでに少し運を使っている。

一年ぶりに足を踏み入れたBillboard Live TOKYOには、グラスの光とステージの照明が同じ夜の中に収まる独特の空気があった。この日の公演名は「女は女である。」。野宮真貴のバースデーも祝う、デビュー45周年の前夜祭だ。大野由美子、吉村由加、田渕ひさ子、武田理沙による女性だけのバンドが、その言葉を飾りではなく、ステージの姿として見せていた。

「私の全て」から始まった時間は、「20th Century Girl」「Sunday Girl」へと続いていく。前夜祭という言葉には、まだ本番の手前という響きもある。しかし、ここで差し出されたのは遠慮のない一夜分の音楽だった。野宮が歌い始めると、ピチカート・ファイヴの時代に親しんだ都会的で少し気取った香りが蘇り、それがいまの声と同じ場所で鳴る。過去が展示されるのではなく、現在のステージへきれいに席を移していた。

やがて小泉今日子が現れる。舞台に立った瞬間、客席の意識がすっと一点へ集まるのがわかった。そして「なんてったってアイドル」が始まる。曲名そのものに眩しさがあり、野宮真貴と小泉今日子が同じステージにいる光景には、説明より先に納得させる力があった。二人を迎えた女性だけのバンドも含め、この日の「女は女である。」という題が、音と姿を伴って立ち上がる場面だった。

ステージ背後のカーテンが開くと、窓の向こうに東京の夜景が広がった。カーテンというものは、閉じているあいだは背景にすぎない。それが左右へ動いた途端、窓の外の灯りまで公演に参加し始める。あの数秒によって、会場の外にあったはずの東京が、急にステージの奥行きになった。

そこで歌われる「東京は夜の7時」。実際の時刻はもう少し進んでいたが、曲が始まれば時計の側が折れる。窓の外の街の灯りも車の流れも、歌に合わせて用意されたわけではない。それでも、すべてがこの曲のために動いているように見えてくる。「東京は夜の7時」とは時刻の報告ではなく、東京の夜をその時間へ連れていく合図なのだと思った。現実の街を背負いながら、現実を少しだけ映画の一場面へ近づける歌だった。

アンコールでは小泉今日子と「潮騒のメモリー」が歌われ、さらに「三月生まれ」、そして「陽の当たる大通り」へと進んだ。三月に開かれた前夜祭とバースデー・ライブに「三月生まれ」が置かれる。その題名の収まり方には、贈り物のリボンを最後に結ぶような楽しさがある。満席の表示から始まった夜は、十三曲分の道のりを通って、明るい大通りへ着地した。

帰り道の東京は、来たときと同じ街のはずだった。それでも、窓の向こうで舞台装置になった灯りを一度見てしまうと、街の見え方には歌が混ざる。どこかでまだ「東京は夜の7時」が鳴り、別の角では「陽の当たる大通り」が待っているような気がした。偶然現れた一席は、最後には東京の夜を少し広く見せる席になっていた。

野宮真貴@Billboard Live東京 2026

 

野宮真貴@Billboard Live東京 2026

 

野宮真貴@Billboard Live東京 2026

 

野宮真貴@Billboard Live東京 2026

ARCHIVE DATA

LIVE

日付・時期
2026年3月5日
正式名称・公演名
「女は女である。」~野宮真貴デビュー45周年前夜祭&バースデー・ライブ~
場所・会場
Billboard Live TOKYO
SETLIST
1. 私の全て
2. 20th Century Girl
3. Sunday Girl
4. きみみたいにきれいな女の子
5. 東京ディスコナイト
6. 私の人生、人生の夏
7. なんてったってアイドル
8. 我が名はグルーヴィー
9. Twiggy Twiggy
10. 東京は夜の7時

encore
11. 潮騒のメモリー
12. 三月生まれ
13. 陽の当たる大通り
出典:野宮真貴とKYON²を同じステージで見た夜|Yamika
その他の事実メモ
野宮真貴(Vo)
大野由美子(Ba)
吉村由加(Dr)
田渕ひさ子(Gt)
武田理沙(Key)


Special Guest
小泉今日子(3/5東京公演、3/20大阪公演)
YOU(3/6東京公演)
Open / Start
3.5(Thu)
1st Stage / Open 16:30 / Start 17:30
2nd Stage / Open 19:30 / Start 20:30
3.6(Fri)
1st Stage / Open 16:30 / Start 17:30
2nd Stage / Open 19:30 / Start 20:30


2026年にデビュー45周年を迎える野宮真貴が一度はやってみたかったという「女性だけのバンド」でビルボードライブ・ツアーを開催する。
バンマスにはベーシスト大野由美子(バッファロー・ドーター)を起用、ドラムに吉村由加、キーボードに武田理沙、ギターに田渕ひさ子(ex.NUMBER GIRL)が参加。
そしてゲストには、野宮がこのライブに是非参加して欲しかったという小泉今日子。二人は同じレコード会社から80年代にデビューし、のちに小西康陽や川勝正幸のプロデュースにより音楽を作ってきたという共通点を持っている。もう一人のゲストは、野宮からのラブコールに応えてくれたYOU。現在は女優・タレントとして活動しているが、1988年にFAIRCHILD(フェアチャイルド)にボーカルとして参加。当時ポータブル・ロック在籍中の野宮とYOUは同じテクノポップというフィールドで活動し、ライブでの共演など交流があった。
ツアー・タイトルの「女は女である。」は、ジャン・リュック・ゴダールの映画のタイトルだが、野宮が敬愛する映画の主人公アンナ・カリーナが演じた「何ものにもとらわれず自由奔放に人生を生きる女性像」は、野宮、小泉、YOU、そしてこのバンドのイメージを重ね合わせたタイトルとなっている。
2026年9月にデビュー45周年を迎えるその前夜祭として、そして3月12日の野宮のバースデーをセレブレイトする「女は女である。」。野宮、小泉、YOU、ここでしか観ることができない「夢の共演」を楽しみにしてほしい。

(~野宮真貴デビュー45周年前夜祭&バースデー・ライブ~ | TOKYO | Billboard Live)

RELATED RECORDS

SOCIAL ARCHIVE

X / Instagram に残る、この記録に紐づく投稿。

update: 2026年3月7日11:15 pm