2023年、ハワード・ジョーンズがBillboard Live東京にやって来た。ただし今回はひと味違う。オンステージメンバーに、元カジャグーグーのニック・ベッグスがいる。カジャグーグーのメンバーを連れてくるハワード・ジョーンズという組み合わせだけで、こちらの平静はかなり怪しくなっていた。
しかもビルボードのキャンペーンで、1枚のチケットで2人入れるという摩訶不思議かつお得な施策まで用意されていた。お得なのだから賢く利用すればいい。ところが私は即座に理性を失い、9月8日の1stと2nd、さらには翌9日の1stまで買い込んでしまった。
1枚で2人入れる話から、どうして3ステージ購入する話になるのか。計算の筋道はよく分からないが、興奮した本人としては一応つながっている。お得なキャンペーンに乗ったはずが、見る回数を増やしているのだから、ビルボードの施策は実に正しく私へ作用したのである。
ステージでは「ASSAULT AND BATTERY」から始まり、「WHAT IS LOVE?」「LIFE IN ONE DAY」と続いていく。その中で、どうしても目が行くのがニック・ベッグスだった。常にニコニコしながらベースを弾いていて、その姿を見ているだけで、今回このメンバーで来たことの面白さがじわじわ効いてくる。
ニック・ベッグスは渋く、かっこよくなっていた。それでいてニコニコしている。渋さとかっこよさを備えた人物が楽しそうに弾いているのだから、こちらとしては眺める理由しかない。
そして「TOO SHY」が来た。ハワード・ジョーンズがカジャグーグーを歌う。曲目として書けばそれだけなのだが、実際に目の前で起きると、それだけではまったく済まなかった。
ハワード・ジョーンズのステージを見に来て、ニック・ベッグスがベースを弾き、ハワード・ジョーンズが「TOO SHY」を歌っている。夢のような時間とは、こういうときに使う言葉だったらしい。3ステージも買ってしまった自分へのツッコミは、このあたりで都合よく消えた。
その後も「NO ONE IS TO BLAME」「HIDE AND SEEK」と進み、「NEW SONG」から「THINGS CAN ONLY GET BETTER」へ至る。よく知っている曲が並ぶ一方で、この日の私の記憶には、ニコニコと演奏するニック・ベッグスと、カジャグーグーを歌うハワード・ジョーンズがしっかり居座った。
9月8日の1st、2nd、そして9月9日の1st。買うときには理性を失っていたが、見終わった側は妙に納得している。お得なチケットに興奮して公演数まで増やし、夢のような時間を3回分抱えて帰ったのだから、少なくとも私の計算ではこれで正解なのである。