
四年に一度、幻のように現れるドリカムWONDERLAND。行けた者には伝説となり、行けなかった者には神話となる特別な祭典。私も長らく憧れを抱きながら、例によってチケットはあっけなく手のひらからすり抜けた。
ところが開始時間の変更に伴ってチケットが再販された。こういう知らせには妙に反応が早くなり、今度は買えた。最初から狙いどおりだったような顔もできるが、実際は一度きちんと取れなかった人である。
2023年9月1日、東京ドーム。席はかなりうしろだったが、ステージが真ん中にあるので、距離だけを見て身構えていたほど厳しくはなかった。遠い席から中央を見るというより、ドーム全体がステージのほうを向いている中に自分も収まった感じだった。
そして始まると、吉田美和さんがすごい飛び方をしてこちらへ来る。飛ぶとは聞いていた、あるいは何となく想像していた、という程度の準備では足りない。本当に飛んでくるのである。
かなりうしろの席を引いた私に対し、吉田美和さんの側が距離を詰めてくる。もちろん私個人を目指しているわけではないが、そこは都合よく受け取ってよい。チケット再販を見つけた者への対応としては、あまりにも手厚かった。
「大阪LOVER」から「あなたと同じ空の下」へ進み、「うれしい!たのしい!大好き!」が来る。曲名だけでもすでに感情が忙しいのに、こちらはまだ、吉田美和さんが飛んできた事実を処理している途中だった。最初から満足というか、まず驚いたのである。
中盤には「未来予想図」「未来予想図II」「ア・イ・シ・テ・ルのサイン」と続く。こうして曲がまとまって置かれると、1曲ずつ知っているのとは別の流れになる。WONDERLANDは曲をたくさん聴く場であると同時に、その並びごと受け取るものなのだと、この3曲のところでは素直に思った。
「決戦は金曜日」が鳴り、この日の東京ドームも金曜日だった。偶然ではあるのだろうが、曜日までセットリストに参加しているようで、こちらとしては少し得をした気になる。そういう小さな一致まで拾い始めるあたり、もう十分に楽しんでいる。
「あの夏の花火」までたどり着いても終わらず、アンコールには「朝がまた来る」「何度でも」、そして「さぁ鐘を鳴らせ」まであった。最初から飛んできた人が、最後まで曲を渡し続けていく。全29曲というフルコースを前に、かなりうしろだからどうだなどと考えていた自分の細かさが、だんだんどうでもよくなった。
一度は取れなかったチケットが、開始時間の変更による再販で手に入った。その席から見たものとしていちばん強く残ったのは、やはり吉田美和さんのすごい飛び方である。4年に一度のWONDERLANDへ一度は行ってみたい、という希望は、想定していたよりずっと上空からかなえられた。