• 万博閉幕から

tokyo1970万博体験記 ㉘インド館

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夕暮れの夢洲は、茜色の風が吹き抜け、帰路を急ぐ人々の背中に一日の余韻をまとわせていた。
西口ゲートへ向かう道を歩いていると、突如響き渡るスタッフの声――「あと1分で終了します」。その声に引き寄せられるように足を止め、気づけばインド館の扉の前に立っていた。

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開幕当初から「まだ開かない」と噂され、期待と謎が入り混じった存在であったインド館。ついにその扉が開いたという話を聞きつつも、訪れる機会を逃していた。閉館ぎりぎり、滑り込むように足を踏み入れた瞬間、異国の風が頬を撫でる。

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中は思いのほか広く、天井の高みから降り注ぐ光が万華鏡のようにきらめいていた。壁一面に映し出される映像は、神話の神々が舞い踊り、インドの大地を走り抜ける列車が未来都市を駆け抜け、色彩が波のように重なり合っていく。どこか幻のようで、足元の床さえ揺れているかのように錯覚する。

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やがて視線はひとつの模型に吸い寄せられる。オレンジに輝く流線形のボディ――インドの高速鉄道の模型だろうか。まるで飛翔する鳥のように、次なる時代の風を切る姿を想像させる。その精巧な造形は、見ているだけで胸の奥に旅心を芽生えさせる。

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館内に響く微かなインド音楽、スパイスの香りを思わせる空気、そして未来へ走り出す鉄道のイメージ――それらすべてが、閉館間際のわずかな時間を奇跡のように彩っていた。

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外へ出ると夜の帳が夢洲を包み、インド館は再び静寂の中に沈む。だが胸の内には、遥か彼方の大地と未来の列車が、いまも走り続けている気配が残っていた。

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投稿日:2025年8月2日

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