
夢洲という島は、まことに奇妙な場所である。舞洲とは「夢舞大橋」でつながり、咲洲とは「夢咲トンネル」で結ばれている。しかし、空に吊られた一本の橋と、海底に潜った一本のトンネルしか道がない。
もしも南の海が怒り、地が揺れ、この二つの道が使えなくなったとしたら。夢洲に集った人々――最大22万7000人――は、たちまち孤島の住人と化す。
計画ではその7割、15万人を橋とトンネルで避難させるというが、液状化で車は進まず、停電で電車も止まるかもしれぬ。そうなれば、万博会場内の建物が一時のねぐらになるらしい。だが、会場のすぐ隣のIR予定地では、地面がとろけるように液状化するとの調査結果がある。ならば、夢洲の地もまた、幻想のように揺らぎやすいのではないか。
防災計画の言葉は美しく整っている。けれど、現実はもっと泥臭く、そして気まぐれだ。ならば、せめて想像力という名の杖を手に、私たちは歩むしかないのかもしれない――この夢の島の未来を。
万博開催中に大地震が起きたら…橋とトンネルで15万人避難、致命的な場所が会場に選ばれた理由
4/16(水) 16:32配信 JBpress夢洲には、同じく人工島である舞洲との間に架かる「夢舞大橋」と、咲洲との間を海中で結ぶ「夢咲トンネル」という二つのアクセスルートしかない。
地震でこれらが使用できなくなり、夢洲が孤立してしまった場合を想定した避難計画の脆弱さ、夢洲は液状化しにくいという誤った前提などを筆者は指摘し、24年9月に公表される「防災実施計画」を注視していく旨を記した。だが、実際にその実施計画を確認しても、課題が解決したとは言い難い内容だった。
万博協会はピーク時の来場者数を1日22万7000人と見込んでいる。防災実施計画では、その約7割に当たる約15万人を橋と海中トンネルを使って避難させるという。夢舞大橋も夢咲トンネルも、南海トラフ巨大地震を想定した「震度6弱に対する耐震性は備えている」としているが、夢洲の液状化で車が使用できない場合や、停電で大阪メトロが動かない可能性も否定できない。
15万人が夢洲に孤立した場合はどうするか。同計画では地震発生後の緊急的な滞在場所である「一時滞在施設」として、万博会場内の催事施設、休憩所、パビリオン、大屋根リングなどを挙げるのみにとどまっている。
会場外への避難では「舞洲及び咲洲において、一時滞在施設として利用可能な建物を確保する」方針だが、問題になるのが液状化だ。防災基本計画では、「夢洲では(中略)会場の大部分は液状化が起こらない」想定になっている。
しかし、万博会場に隣接するIR(カジノを中心とする統合型リゾート施設)の事業者がボーリング調査した結果、液状化の可能性が高いとして対策工事を実施している事実がある。道路一本隔てただけのIR予定地は液状化するが、万博会場はしないというのは理屈に合わない。液状化の可能性が高いことを前提に対策を講じるべきだろう。
(万博開催中に大地震が起きたら…橋とトンネルで15万人避難、致命的な場所が会場に選ばれた理由(JBpress) – Yahoo!ニュース)