
土曜の夢洲は、ひととき現世を忘れさせる奇天烈な舞台装置だった。老いも若きも、まるで遠足の前夜に逆戻りしたかのような浮き足立ちで集い、パビリオンの門前には希望と忍耐が交差する列ができていた。アメリカ館、フランス館——予約なしでも挑めるその牙城には、すでに2時間待ちの長蛇。かと思えば、マレーシア館ではたった5分でIoT都市を体験し、無駄に賢くなった気になった。
だが運命とはときに容赦がない。アイルランド館では整理券の配布前に締め切りという非情な宣告。しかし人間はパンによって立ち上がるものだ。ベトナムのバインミーで心を補修し、レトロソフトクリームで1970年の記憶の幻に舌鼓を打つ。
真紅のシンガポール館、オマーンの鮮烈な赤、そしてコロンビア館の仄かなコーヒー香。それぞれが国の個性を凝縮した舞台のようで、観客は待ち時間15分の奇跡を探し歩いた。コモンズ館のような連合パビリオンもまた、思わぬ拾いものがある。7時間で6館——ささやかだが濃密な旅。
7500円の入場料は安くないが、夢と現実の境を彷徨う7時間には、それなりの値札が必要なのだ。
「フラッと大阪万博」にトライ! 予約なし、行列を避けてどこまで楽しめるのか
公開日:2025/05/31 06:00 日刊ゲンダイDIGITALそうだ万博、行こう──。大阪・関西万博の開幕から1カ月が過ぎた頃、そう思い立った日刊ゲンダイ記者は今月17日(土)に現地を訪れた。
果たして、万博はパビリオンの予約なしでフラッと行って楽しめるのか。
それでも、そこそこの人出だったようで、来場者は12万3974人(関係者1万6464人)。家族連れやカップル、インバウンドなど老若男女で賑わい、予約なしで入れるパビリオンの中でも人気のアメリカ館やフランス館は正午時点で2時間待ちの大行列だった。
まず初めに向かったのはロボット・モビリティー館。VRを駆使した宇宙遊泳や月面走行シミュレーションが体験できるが、どちらも90分待ちだったため断念。
5分ほど並んで入ったマレーシア館では、IoTに特化した都市づくりを見学。「へ~」と感心しつつ、今度はアイルランド館に向かうと、整理券の配布開始15分前にもかかわらず、受け付け終了のアナウンスが。やや落ち込んだものの、ベトナムの伝統的なサンドイッチ「バインミー」(1650円)で腹を満たして悲しみにさよならだ。
巨大な赤い球体がトレードマークのシンガポール館、これまた真っ赤なオマーン館、コーヒーの香りが漂うコロンビア館など、参加国が独自に用意したタイプAのパビリオンでも、探せば15分ほどの待ち時間で見て回れる。ただ、共同出展のコモンズ館も捨てがたい。
滞在7時間のうち入館できたパビリオンはコモンズも含め計6館。そこそこ楽しめるが、1日券は大人7500円と安くない。気軽に行くもんじゃないな。
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