REVISITED 2026

ウルトラの文字

ウルトラの文字

子どもの頃、テレビの向こうで活躍するウルトラマンたちを眺めながら、怪獣とは別に目を奪われていたものがある。空に現れる、記号のような文字列。ウルトラ文字である。何と書いてあるのか。それより先に、文字を空へ書くという行為そのものが格好よかった。

文字といえば、ノートの罫線や原稿用紙の升目に収まるものだと思っていた。ところがウルトラ文字には紙がいらない。手などから放たれたエネルギーが、上空や宇宙空間をそのまま通信欄に変えてしまう。空は眺めるものではなく、書き込めるものだったのである。

もちろん真似はした。ノートの隅にそれらしい線を描き、宇宙の通信に参加したつもりになる。しかし、形を似せることと読めることは別だった。書いた本人にも解読できない。秘密の文書としては、あまりにも守りが堅い。意味がわからないからこそ、その線の一本一本には遠い星の気配が残った。

やがて仕事に追われ、電車に揺られる大人になり、ウルトラ文字は記憶の奥へ沈んでいった。忘れたというより、しまった場所を忘れていたのだと思う。子どもの頃の憧れには、そういうものが多い。消えたように見えて、思いがけない形をした鍵が現れるのを待っている。

その鍵を祖師ヶ谷大蔵で見つけた。街を歩いていると、不意にウルトラ文字が目に入ったのである。ウルトラマンの故郷ともいえる街で再会したその文字は、昔と同じように謎めいていた。それでも今度は、読めないまま通り過ぎる必要がない。胸の奥では、ノートの隅に線を重ねていた自分まで起き上がっていた。

今ではインターネットで検索すれば、ウルトラ文字の一覧表が見つかる。かつて宇宙人だけのものに思えた文字を、自分の手元で確かめられる。これはかなり静かな未来だ。空を飛ぶわけでも、光線を放つわけでもない。ただ、昔はわからなかった文字が読める。その一点だけで、二十一世紀は子どもの頃より少し宇宙に近い。

祖師ヶ谷大蔵の街角にあったのは、文字だけではなかった。忘れていた好奇心へ戻るための、小さな入口でもあったのだ。ウルトラ文字を見つけ、一覧表を探し、ひとつずつ読み解いていく。街歩きの途中で拾った数本の線が、記憶の中の空にまで伸びていく。

考えてみれば、文字は時間を越えて何かを伝えるためにある。ウルトラ文字もまた、空や宇宙空間を渡る通信であると同時に、子どもの自分から大人の自分へ届いたサインだったのかもしれない。ずいぶん長い時間をかけて届いたが、そのぶん解読する楽しみは残っていた。

ウルトラの文字

 

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ウルトラサイン ウルトラ戦士たちが通信用に使用する信号。手などからエネルギーを発射し、上空や宇宙空間にウルトラ文字を描くことで伝達される。「ウルトラマンA(エース)」で初めて導入された。
(【記事全文】「シン・ウルトラマン」宿命の主演・斎藤工 公開直前インタビュー「これぞ特撮という最高に格好いい形」 – スポニチ Sponichi Annex 芸能)

update: 2026年6月7日1:55 pm