
2013年以来となるKRAFTWERKとの再会は、思いがけず新しい劇場で果たされることになった。SGCホールのオープニングシリーズ、その一角を担う「MULTIMEDIA TOUR 2026」。マルチメディアという言葉の響きは、どこか懐かしく、それでいて今なお更新され続ける未来の合言葉のようでもある。
もう少し早く決断していれば、と小さな後悔を抱えつつ、与えられた席は四階九列目。しかしこの会場は、距離という概念を巧みに裏切る構造をしていて、どこに座っても視界がよく、むしろ全体像を見渡せる特等席のように思えてくる。駅からの導線も軽やかで、席に身を預けたまま、音と光にゆっくりと包まれる準備が整う。
やがて照明が落ち、音が立ち上がる。このホールが誇るイマーシブサウンドシステムは、音を単なる波ではなく、空間の質量として感じさせる。前後左右から押し寄せる電子音は、耳だけでなく身体全体で受け止めるものとなり、観客は次第に“聴く者”から“存在する者”へと変わっていく。
スマートフォンでの撮影が許されていることも、この体験を奇妙に現代的なものへと変える。目の前の現実をそのまま記録しながら、同時にその場に没入していくという、二重の感覚。
「Numbers」でメンバーが登場した瞬間、時間の軸が静かに歪む。だがラルフ・ヒュッターがふと立ち止まり、何かを思い出したように一度戻るという小さな出来事が起こる。その仕草すら、どこか機械的でありながら人間的で、妙に印象に残る。
79歳という年齢が信じられないほど、彼は軽やかに再び位置へと戻り、何事もなかったかのように音の流れを再開する。その姿に、時間とは直線ではなく、円環なのではないかという思いがよぎる。
背後に広がるビジュアルは、レトロでありながら古びることがない。どこか懐かしい色彩と形が、電子音と結びつくことで、過去と未来の境界を曖昧にする。まるで古いSF映画の中に迷い込んだかのような感覚が、現実のホールの中で立ち上がる。
この日は有明でTM NETWORKもライブをしており、街全体が電子音楽に静かに満たされていた。目には見えない振動が空気を伝い、都市そのものが一つの巨大なシンセサイザーになったかのようだった。
KRAFTWERKのライブとは、単なる音楽の鑑賞ではない。音と光と時間が絡み合い、観る者の感覚そのものを静かに書き換えていく装置である。あの夜、私は確かに“マルチメディア”という言葉の内部に入り込み、しばし現実の外側を歩いていたのだと思う。




















- Numbers
- Computer World
- Computer World 2
- It’s More Fun to Compute
- Home Computer
- Spacelab
- Airwaves
- Tango
- The Man Machine
- Electric Cafe
- Autobahn
- Computer Love
- The Model
- Neon Lights
- Merry Christmas Mr. Laurence [坂本龍一]
- Geiger Counter
- Radioactivity
- Tour De France
- Chrono
- Tour de France (Etape 3)
- Trans-Europa Express
- Metal On Metal
- Abzug
- Pocket Calculator
- Dentaku
- La Forme
- Planet Of Visions
- Boing Boom Tschak
- Techno Pop
- Musique Non Stop
アンコール
- The Robots
(Kraftwerk @ SGC HALL ARIAKE (東京都) (2026.05.02) | ライブ・セットリスト情報サービス【 LiveFans (ライブファンズ) 】)
KRAFTWERK MULTIMEDIA TOUR 2026
2026年5月1日(金)
SGC HALL ARIAKE
18:00 open 19:00 start
SGCホール有明 オープニングシリーズ
・主催:J-WAVE
・協力:ワーナーミュージック・ジャパン
・企画・招聘・制作:ウドー音楽事務所