
晴海の海辺を歩いてトリトンスクエアへ入ると、ひとつの数字が街のあちこちから姿を現す。「3」である。名の由来となったギリシア神話の海神トリトン。その響きに含まれる「Tri」には、職・遊・住という三つの機能と、街の象徴である三本の高層タワーが重ねられている。
数字の3は、二つのものの間にもう一つを置く。仕事と暮らしの間には遊びがあり、建物と建物の間には歩く時間がある。オフィス、住宅、ショップ、レストランが一つの敷地に並ぶこの街では、用事だけを済ませて通り過ぎるより、少し寄り道をしたくなる。
その寄り道を受け止めるのが、花のテラス、緑のテラス、水のテラスだ。ここにも律儀に三つがある。花、緑、水という並びは、都市の中へ小さな風景を順番に差し込む仕掛けのようでもある。名前を目で追うだけで足取りが変わり、次のテラスまで歩いてみようという気になる。巨大な街を案内するのが、簡潔な三つの言葉なのも面白い。
東京駅から3キロ、銀座から2キロ。かつて晴海団地があった場所には、職・遊・住がまとまりをもって配置された街が生まれた。過去を消して別の場所になったというより、人が暮らし、働く時間の上に、新しい歩き方が重ねられたように感じられる。
昼には人が憩い、夜には水辺の静けさが街を包む。三本のタワーばかりを見上げていたはずが、帰るころには三つのテラスの名が残っている。トリトンスクエアの「3」は説明のための数字ではない。街を急がず巡るための、ささやかな道しるべなのである。












