それはソドー島における、最も有名かつ奇妙な反抗劇である。
その日、ヘンリーは不機嫌だった。彼は美しい緑のボディを誇りにしており、雨に濡れるなど言語道断。
そんなわけで、トンネルを見つけると「こここそ安全地帯!」とばかりに逃げ込んだ。そして動かない。
どれほど運転手が腕がもげる勢いで煽ろうとも、ヘンリーはプシューッと蒸気を吹きかけるばかりであった。
やがてトップハム・ハット卿が登場し、「さあ、出てきたまえ!」と威厳たっぷりに命じる。しかしヘンリーは動かない。となると、力ずくである。乗客総出で押したり引いたりするが、彼の意志はトンネルの壁よりも固い。
ついに卿は宣告する。「どうしても出ないなら、ずっとそこにいるがよい」
無情にも線路は取り外され、トンネルの出口は目元まで煉瓦で封鎖された。こうしてヘンリーは、光なき幽閉の日々を迎えることとなったのである。



