
ロッテリアが終わると聞いたとき、胸の奥にひとつの地下空間がぽっかりと浮かび上がった。90年代から2000年代、新宿へ出るたびに紀伊國屋で本を抱え、そのまま裏手の地下へ降りていくのが私の小さな儀式だった。あのやけに広いロッテリアのフロアは、都会の真ん中にありながら、どこか時間の流れが緩やかで、本の匂いとポテトの香りが混ざり合う、秘密基地のような場所だった。
紙袋から取り出したばかりの新刊を机に置き、まずはフライドポテトに手を伸ばす。世の中には数多のポテトが存在するが、あの軽やかな塩気とほくほく感は、私の中ではロッテリアが頂点である。そしてリブサンド。甘辛いソースと香ばしい肉の重なりは、単なるファーストフードを超え、ひとつの完成された幸福の形をしていた。ポテトとリブサンドのセットは、青春の午後を支える最強の布陣であった。
それが2026年3月末をもって、全店舗が「ゼッテリア」へと姿を変えるという。ロッテリアという名が消え、リブサンドもまた記憶の側へ移る。創業は1972年9月29日。日本橋と上野に灯った最初の店から半世紀以上、街のあちこちで人々の空腹と孤独を静かに受け止めてきた歴史がある。
店名が変わるだけだと言われれば、それまでかもしれない。しかし、名前とは記憶の容れ物である。あの地下空間で本を開いた時間、紙ナプキンの手触り、トレイに置かれた赤いロゴ。そのすべてが「ロッテリア」という響きに結びついている。
だからこそ、なくなる前にもう一度、あの味を確かめに行きたい。リブサンドをかみしめながら、新しい本をめくる。そんな何気ない午後こそが、かけがえのない贅沢だったのだと、今さらながら思い知らされるのである。






リブサンド ポーク
単品 ¥540
セット ¥890
ポークパティとレタスを、サワー種を使用した全粒粉入りのソフトフランスパンにサンドし、スモーキーでスパイスの効いたBBQソースとハニーマスタードソースで味付けした人気商品。
(リブサンド ポーク|メニュー|ロッテリア)
「ロッテリア」全店が「ゼッテリア」に変わる…その決定的な違いと「ゼッテリア」が目指すもの
2026.02.17 マネー現代ファストフードチェーン店「ロッテリア」が54年の歴史に幕を下ろす。
かつてロッテリアは、ハンバーガー業界で「マクドナルド」に次ぐ2位のポジションを確立し、アメリカンテイストを土台にしながら、日本人の嗜好に寄り添ったメニュー展開で存在感を示していた。
だが、その立ち位置はいま、大きく様変わりしている。
ロッテリアの国内店舗数は2025年12月末時点で106店にまで縮小。一方、現在は「すき家」などを展開するゼンショーホールディングスの傘下となっていたのだが、ゼンショーは2023年に後継ブランドとして新業態「ゼッテリア」を立ち上げ、すでに172店へと拡大している。ロッテリアは2026年3月末をもって国内全店を閉店し、以降は順次、ゼッテリアへと転換される予定だ。
(「ロッテリア」全店が「ゼッテリア」に変わる…その決定的な違いと「ゼッテリア」が目指すもの(A4studio) | マネー現代 | 講談社)
