オットマー・ヒッツフェルトが、今季限りでバイエルン・ミュンヘンから去ることを疑う者はない。だがその結論を発表する代わりに、バイエルン内部で繰り広げられているのは、かつての救世主ヒッツフェルトをめぐる醜い猿芝居である。ウリ・ヘーネスマネージャーやカール=ハインツ・ルンメニゲ代表が、少なくともヒッツフェルト監督を気持ちよく送り出そうと試みたのに対して、「妄言」で知られる皇帝フランツ・ベッケンバウアーの態度には、他人への敬意が感じられない。
以前、ルンメニゲ代表がヒッツフェルトを批判し始めた頃、ベッケンバウアーはこれ見よがしに監督を擁護してみせた。ベッケンバウアーは、今年3月31日にはまだ「私は、彼が2020年までバイエルンにいると思う」と述べていた。ところが一番最近のコメントでは、ヒッツフェルト監督を徹底的にこきおろし、ヒッツフェルトの円満な退団を不可能にした。
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6年間にわたりドイツサッカー界の大戦艦の舵をとってきた監督が、その進退に関して何週間も好奇の憶測をめぐらされるのは、その功績から見て異常な事態だ。今回の騒ぎの頂点は、ヒッツフェルトがサッカー専門誌『キッカー』から、フェリックス・マガトの監督就任が決定したと聞かされた瞬間だった。これは6年間に8つのタイトルを獲得した監督には、ふさわしからぬ仕打ちである。
バイエルンの没落の原因は、監督のせいばかりではない。ダイスラー、ショル、そしてゼ・ロベルトらクリエーティブな主力選手が、たえずケガをしているか、首脳部からバッシングを受けるクラブが、魔法のようなサッカーを披露できるわけがない。
調子が良かろうが悪かろうが、それほど重要ではない試合にも全て駆り出されるミヒャエル・バラックに、いつも素晴らしいプレーを期待することはできない。ダイスラーとバラック、この2人がそろって機能すれば素晴らしいことだろう。だがバラック1人に、バイエルンは荷が重すぎる。その上、リザラズ、リンケ、カーン、コバチ、サリハミジッチといった古株のレギュラー達の調子は、ケガや加齢もあって全盛時にはほど遠い。
もちろん、監督とチームの信頼関係の揺らぎがないとは言えないだろう。だがバイエルンは、クラブ史上最も偉大な監督を気持ちよく送り出す機会を逃した。これはクラブの戦績と共に、バイエルンをめぐるここ数年で最も残念な出来事である。