キングシー

Kingussie

キングシー駅に降り立つと、松林の頭という名がまず足元から立ち上がってくる。ハイランド本線を走ってきた列車は、ここで一度深呼吸をし、旅人もまたそれに倣う。1893年築の駅舎は、過剰な装飾を持たず、長い年月を静かに受け止めてきた顔をしている。

周囲にはスペイ川の気配が漂い、かつて移転を余儀なくされた村や、ルースベン兵舎の石の記憶が地中に眠る。歴史は年表ではなく、風の層として積み重なり、歩くたびに靴底へ伝わってくる。近年この地を騒がせたオオヤマネコの影さえ、神話の後日談のように自然へ溶け込む。ゲール語詩人の余韻と伝統音楽の呼吸が今も空気に残り、キングシー駅は、言葉になる前の物語を迎え入れる玄関口として、今日も列車を待っている。

キングシーの駅近く

update: 2023年2月14日