カルレイン

Culrain

カルレイン駅は、ハイランドの地図にそっと押された栞のような存在である。列車を降りれば、草原は無言のまま広がり、家々は思い出したように点在し、風だけが事情通の顔で行き交う。ほど近くに構えるカービスデール城は、石の肌に幾重もの時代を重ね、かつては旅人を迎える宿として息づき、いまは静かな私邸として水面下で新しい生活を営んでいる。

その変転は、歴史が決して博物館に収まらないことを教える。駅から眺める風景は、自然と人の営みが互いに距離を保ちながら共存する、いかにもハイランドらしい均衡に満ちている。ここでは急ぐ理由が見当たらず、歩調を落とすほどに景色は深まる。カルレイン駅は、目的地に着くためではなく、旅そのものに身を委ねるための入口なのである。

カルレインの駅近く

update: 2023年7月25日