アードゲイ駅は、地図の余白にそっと置かれた句読点のような存在である。ドーノック湾の南西岸、キャロン川の谷が静かにほどけ、カイル・オブ・サザーランドの河口へと流れ込む地点に、この小さな村は身を潜めている。列車を降りれば、風は塩気と草の匂いを混ぜ合わせ、遠くの丘と水面を同時に視界へ招き入れる。
ボナー橋の喧騒は一マイル南で薄れ、ここでは時間が慎重に歩調を落とす。行政区分や郵便番号といった現実的な枠組みすら、風景の奥へと溶けていく。谷と湾の境目に立つこの駅は、ハイランドの内部へ静かに踏み込むための扉であり、旅人の思考を余分なものから解放する場所である。
アードゲイの駅近く