ウェリン・ガーデン・シティ/Welwyn Garden City - 英国(イギリス)鉄道全線全駅

ウェリン・ガーデン・シティを歩くと、まるで一冊の理想論の中に迷い込んだような気持ちになる。レンガ造りの家々はまっすぐな街路樹の下に静かに並び、空はどこまでも穏やかに広がっている。風は柔らかく、芝生の上を抜けるたびに、ここが人間の手で描かれた「幸福の設計図」であることを思い出させる。

この町は1920年、エベネザー・ハワード卿が「都市と田園の結婚」を夢見て生まれた。レッチワースで蒔かれた種が、ここウェリンで花開いたのだ。機能的な都市の姿と、牧歌的な自然の美が奇跡のように調和している。まるで理性と憧憬が手を取り合い、一つの街を育てているようだ。

午後の陽射しの中、整然と並ぶ通りを歩くと、人々の暮らしの音がどこからともなく響いてくる。子どもの笑い声、パン屋の扉が開く音、遠くで響く列車の汽笛。すべてがやさしく、この町の呼吸そのもののように感じられる。

ウェリン・ガーデン・シティは、単なる都市ではない。夢見がちな人間たちの、理想と現実のちょうど真ん中にある場所だ。ここでは街そのものが、今も静かに夢を見続けている。

↑ wikipediaでの写真

ウェリン・ガーデン・シティの駅近く