サウスエルムソールという名を口にすると、風の音がどこか懐かしく響く。丘の向こうから立ちのぼる煙はもうないが、かつて炭鉱の火がこの町を照らしていた頃のぬくもりが、いまも石造りとレンガ造りの家々の壁に染みこんでいる。産業革命のざわめきの中で、人々は土を耕し、レンガを焼き、石を積み上げ、やがて小さな集落はひとつの町のかたちを得た。
ドゥームズデイ・ブックに名を刻んだほどの古い土地である。その頁をめくるように町を歩けば、時間の層が静かに折り重なっているのがわかる。かつての作業場の跡、風に晒された壁のひび、夕暮れの道に立つ古い街灯——それらはみな、過ぎた時代のかけらであり、いまも確かにここに生きている。
この町には、派手さも急ぎ足もない。ただ、長い時間の流れを受け止めてきた静けさがある。その静けさに耳を澄ませると、遠い昔のハンマーの音や、家路を急ぐ人々の笑い声が、風の底からふと聞こえてくる気がする。
↑ wikipediaでの写真
サウスエルムソールの駅近く
サウスエルムソール/South Elmsall
- サウスエルムソール駅情報
- 駅開設:慶応2年 今年目
- 乗降客数:740人 (2022-23年)